いつもの三島由紀夫の丹念なまでの事象の追求というものはこの本にはなく、極めて読み易かったです。「花ざかりの森・憂国」の短編集で垣間見た、三島由紀夫のニヒリズムとユーモラスがふんだんに盛り込まれてます。

 

1.人間は不明瞭で、不確実なものにこそ恐怖する

死に対する恐怖とは何か、ということに対する言及が物語の終盤に行われるのだけど、結局人間は不明瞭で、不確実なものに対して恐怖するとのこと。で、さらに一言足すならば、他人の意志に任せれた瞬間にそれは不明瞭で、不確実になるということなのかなと。自殺するのは良かったんだけど、人に自殺を強要されるのはヤダってこと。まぁ、当たり前だよね笑

 

2.羽仁男(主人公)の精神状態

どうやら、この死にたい願望を三島さんは現代人の病だとかそういうテイストで書きたかったらしいけど、そんな大袈裟なテーマはどうでもいいんですよ。

一読者としては、羽仁男の精神状態を共有することで楽しめる世界だと思います。羽仁男の世捨て人的な考え方は、人間疲れているときにこそ必要で、しかもちゃっかり女の子にもモテるようになっちゃってみたいな。

 

3.ユーモラスな三島さんとはこういう感じなのね

学者先生がバラエティ番組でちょっと頑張っちゃってるみたいな、どこか垢抜けない可愛さを感じながら読むと楽しめます。やっぱり、三島由紀夫の王道小説に一息ついたあたりに読むのがいいんじゃないですかね。

 

個人的には、現代小説にはストーリー性を、文豪さんの小説には哲学性を求めて読むことが多かったのですが、両方一気に楽しめるという意味では、この小説はおススメです。